邂逅
よく “人生は出会いと別れのくり返し” などと言われます。
マゾ人生もまた然り。
僕もこれまで本当に数多くの女王様と出逢い、そして別れをくり返してきました。
SM界のレジェンドとなったあの女王様との初プレイ。
SM誌のグラビアを飾ったカリスマ女王様の方々にも、お相手をして頂きました。
新人女王様の最初のプレイに遭遇した事もありました。
SMクラブには所属していない素人女王様達とのプレイも体験してみました。
SMクラブのはしごをした事もありました。
一度に5人の女王様とプレイして、女性の怖さを思い知らされた事もありました。
何かに取り憑かれたようにSMクラブに通い詰めていたあの頃…
でも、その割には満足度はいまひとつだったような気がします。
期待に胸を膨らませながらホテルへと向かい、モヤモヤした気持ちを抱えながら帰宅した日々。
当時の僕はSMにいったい何を期待し、何を求めていたのか…今となってはそれすらも定かではありません。
ほとんどのかたとが、1〜2度だけのプレイでしたが、中には何年かお付き合いをさせて頂いた女王様もいました。
記憶に残っているのは5人ほど。
その内の最後のかたと連絡が途絶えてから、僕は徐々にSMから遠ざかっていきました。
母親が余命宣告を受けてからは、二十歳のSM初体験から欠かす事なく続いていたSMクラブ行脚もピタリと止まりました。
しかし、どこかに失望感を抱えながら長いブランクに入った事で、僕のマゾヒズムはブスブスと燻り続けていたのだと思います。
本日8月5日は、某SMクラブで、ご主人様と僕が初めて出会った記念すべき日です。
東日本大震災があった年ですから、あの日から数えて6年が経過し、7年目に入った事になります。
先日、ご主人様から 『ムギが引退せずに、ネットで私の写真を見つけて、お店に会いに来てくれて本当によかった!』 と言って頂きました。
そのお言葉が、とてもありがたく、胸に沁みました。
かりそめではなく、女王様とこんなふうに心と心が通じ合ったのは初めての事なのです。
先頃、僕と同じく、ご主人様がSMクラブにいらっしゃった頃から仕えてきたM男性が、ご主人様のもとを去って行きました。
彼は僕よりも1年位あとからお店に通い始め、僕よりも先にご主人様に誘われて店外で会う関係になったようです。
“奴隷” として認知され、ご主人様から奴隷名まで授かっているのは、僕と彼の2人だけでした。
調教を離れると、お食事やお買い物やドライブなどにもご一緒されていたようで、そういうお誘いが一切なかった僕は、彼の事をとても羨ましく思っていました。
彼から贈られたブレスレットや指輪を、僕の調教時にも肌身離さず身に着けていたご主人様。
僕は彼の存在が気になって 『どういうかたですか?』 とご主人様に訊ねた事がありました。
『基本的にはとても紳士かな。雨の日には、濡れたカバンをお拭き下さいと、ハンカチを差し出すような人。』 とご主人様。
ハードプレイができるわけではないけれど、必死についてこようと頑張っている姿が愛おしかったのだそうです。
しかし、そんな彼の忠誠心も次第に自己本位なものへと変わっていき、ご主人様と気持ちがすれ違う事が多くなっていったようでした。
そして、彼の不注意が招いたアクシデントをきっかけに、ご主人様の彼への不信感はピークに達しました。 対応に苦慮されていたご主人様のもとへ、彼からお別れメールが届いたのはそれから間もなくの事でした。 ご主人様は『これが二度目なので、三度目はない。』と仰っていました。
僕も一度、自分勝手な事をした過去があるだけに複雑な思いでしたが、我が振りを省みる機会にもなりました。
彼とは一度もお会いした事はありませんが、同じ女王様を崇拝する言わば同志のようなものでしたから 『お疲れ様でした』 と労いの言葉をかけて送ってあげたいです。
別れがあれば、又新たな出会いもあります。
この度ご縁があって、ビアンM女性がご主人様の奴隷を志願されてきたのです。
彼女にとって初めてのSM体験という事もあって 『自分のような何もできない者が、果たしてご主人様の奴隷になれるのだろうか…』 と不安げな様子でした。
僕は彼女に 『ハードな責めに耐え得るから奴隷なのではなく、いかに忠誠心を持ってお仕えできるかが重要なのです。』 とお伝えしました。
女性同士なので打ち解けるのも早く、ご主人様はそのM女さんの事をとてもお気に入られたようです。
僕とご主人様が出会ったこの日が、彼女のお誕生日でもある事を知り、不思議なご縁も感じました。
主従関係とは言っても、けっして奴隷からの一方的な思いではなく、僕達はご主人様からもあふれんばかりの沢山の愛情を頂いているのです。
昨年の11月3日、ご主人様と新たに交わした奴隷契約書の中に、ご主人様のお言葉でこんな条項が書き加えられていました。
『乙(ムギ)の肉体が消滅しても、甲(ご主人様)が解除しない限りこの(奴隷)契約は継続されます。 乙の甲に対する忠誠心は永久に滅しません。 甲と乙の繋がりも同様です。』
僕は家に帰ってからこの条項をあらためて噛み締めて、感涙しました。
以前僕が作った奴隷契約書では、生涯に渡ってお仕えする事を誓っていましたが、ご主人様が直筆で書いて下さった契約書には “たとえ肉体が滅んで魂となったとしても、お互いの絆が切れる事はない” と明言されていたのです。
そうです。 ご主人様と僕の主従関係に限っては永遠に“別れ”という言葉は存在しないのです。
なんとロマンチックな事でしょうか‼︎
どんなご縁で
『今、あなたとわたしが
ここにいる
数えきれない
人の中から
選ばれて
あなたと
わたしが
ここにいる
自分の力ではない
あなたの力でもない
目に見えない
不思議な
力に
導かれ
今、あなたとわたしが
ここにいる』
マゾ花のヘッダーにある この詩が心に深く沁み入ります。
明日から又気持ちを新たにして、ご主人様に誠心誠意、お仕えしていきたいと思います。