バイオレンス・コミックの巨星逝く
また一人、子供の頃からのお気に入りだった漫画家さんが亡くなられてしまいました。
望月三起也。 2016年4月3日没。 享年 77 歳。
代表作の「ワイルド7」は2011年に瑛太主演で映画化され話題になりましたので、若い方でもご存知の方がいるかもしれません。
2014年には「W7」というオールカラーの新作が大判の豪華本で刊行され、昨年末には「ワイルド7R(リターンズ)」の第2巻が3年越しの完全新作として描き下ろされたばかりでした。 往年と変わらぬ巧みな構成力と衰えを知らないダイナミックで力強い筆致に舌を巻き、まだまだ伝説は続くものと期待した矢先だったので、まさかこんなに早く逝ってしまわれるとは思いもよりませんでした。
肺腺ガンだったそうです。
©Mikiya Mochizuki
望月三起也氏は、少年キング(1988年12月廃刊)というややマイナーな雑誌を主戦場にしていたせいか、あるいは氏の卓越したセンスが時代に早過ぎたのか、妥協を許さないハイクオリティな作品群を残してきた割には正当な評価がなされてこなかったような気がします。
しかし重厚で緻密なストーリーと、誌面狭しと展開される大迫力のアクションシーンは後に公開された映画「マッドマックス」や「ダイハード」の原点とも言われ、子供から大人まで幅広い読者層を熱狂させた真のエンターテイナーであった事だけは間違いありません。
銃器やメカに精通し、ハードな男の世界を描く事に心血を注いだ作家のように思われがちですが、実は厚い義理人情や独自のユーモアが作品の隠し味となっており、男前のキャラクター達が多くの女性ファンをも魅了していたのです。
またアメリカンナイズドされた肉感的でセクシーな美女を描かせたら漫画界随一で、作品発表の場を青年誌に移してからはその本領を発揮し、艶やかな女性が主人公のコメディ作品で新境地を開拓されていました。
わずかな描線だけでここまで緻密に女性の身体の質感を描き出せる漫画家を、僕は他に知りません。
荘厳なまでの女体美に魅了された望月氏は絵に描くだけでは飽き足らず、女性をモチーフにした多くの3Dフィギュアも自作しています。 その腕前はプロの原型師を超えていると言っても過言ではないほど一体一体が精密に作りこまれ、ファン垂涎の素晴らし出来栄えとなっています。 こんなところにも望月氏の凝り性が表れていると思います。
©Mikiya Mochizuki
実は僕は多感な思春期の頃、望月氏の描くエロかっこいい女性達に心を奪われていました。
特にワイルド7の紅一点・本間ユキのS性は、僕のマゾヒズムをおおいに刺激してくれていたのです。
かつてゲリラ一味に家族を皆殺しにされた彼女は、復讐に燃える冷徹なゲリラハンターとして登場し、やがてその類稀なる戦闘能力と巨悪を許さぬ正義感を買われ、ワイルド7の追加メンバーとして迎えられます。
それまで少年誌では決してお目にかかる事がなかったグラマラスでエロティックな肢体。
銃器だけではなくその躍動感溢れるボディを武器に変えて、悪党どもを次々となぎ倒していく姿に僕は魅了されていました。
何しろ彼女の膝蹴りを顔面に食らった敵の戦闘員が、鼻の下を伸ばして「ウヒウヒもっと…」とおかわりを欲しがってしまうくらいS的魅力がある女性なのです。
©Mikiya Mochizuki
こうした描写を見ると、望月氏は男性に内在するマゾヒズムを充分理解した上で攻撃的な女性を描いていたように思えます。
彼女は作品中ではみそっかすのユキと呼ばれていましたが、中々どうしてリーダーの飛葉を支えて男性メンバーのお株を奪う素晴らしい活躍を見せていました。
作品の後半では警部補の地位を与えられた女性だけの別動隊“女ワイルド7”を結成し、そのリーダーとして圧倒的な存在感を示すまでに成長したのです。
©Mikiya Mochizuki
映画「ワイルド7」に関して言えば、ファンの間でも賛否両論のようですが、漫画原作の実写化は概ね世間的評価は低いものです。 特に“ワイルド7”のようにすでに不朽の名作としての評価が確立されている作品に手を出す事は、聖域を侵す行為に等しいと思います。
原作に思い入れが深いファンほど安易な設定の改変や蛇足的なエピソードの付け足しを嫌いますし、キャラクターのイメージを少しも損なう事なく誰もが納得いくキャスティングをするのは至難の技でしょう。
原作の雰囲気だけはそこはかとなく伝わってはくるものの、やはり別物。 僕にとって映画「ワイルド7」はそんな感想を持った作品でした。
しかしあくまで個人的見解ではありますが、僕は本間ユキのキャスティングに深田恭子を起用した事だけは評価しています。 原作とはキャラクター設定もかなり変更されていましたが、ベビーフェイスには不釣り合いな過激なエロスを発散する肢体、どこかもの悲しげで謎めいたユキのキャラクターに深キョンはピッタリとはまっていたと思います。
何と言っても彼女にならば、悪党になって退治されたいと思えますもん^o^
かつてお色気とアクションを融合させてテレビの前のM男性達を釘付けにしたテレビドラマ「プレイガール」や「フラワーアクション009ノ1」のお姉さま達を、さらに冷酷非情にしたS的キャラクター・ユキはハードマゾに憧れていた少年期の僕の心のドミナでした。
たくさんの夢や希望、M的妄想を与えてくれた望月三起也氏に感謝し、謹んでご冥福をお祈り致します。
望月三起也。 2016年4月3日没。 享年 77 歳。
代表作の「ワイルド7」は2011年に瑛太主演で映画化され話題になりましたので、若い方でもご存知の方がいるかもしれません。
2014年には「W7」というオールカラーの新作が大判の豪華本で刊行され、昨年末には「ワイルド7R(リターンズ)」の第2巻が3年越しの完全新作として描き下ろされたばかりでした。 往年と変わらぬ巧みな構成力と衰えを知らないダイナミックで力強い筆致に舌を巻き、まだまだ伝説は続くものと期待した矢先だったので、まさかこんなに早く逝ってしまわれるとは思いもよりませんでした。
肺腺ガンだったそうです。
©Mikiya Mochizuki
望月三起也氏は、少年キング(1988年12月廃刊)というややマイナーな雑誌を主戦場にしていたせいか、あるいは氏の卓越したセンスが時代に早過ぎたのか、妥協を許さないハイクオリティな作品群を残してきた割には正当な評価がなされてこなかったような気がします。
しかし重厚で緻密なストーリーと、誌面狭しと展開される大迫力のアクションシーンは後に公開された映画「マッドマックス」や「ダイハード」の原点とも言われ、子供から大人まで幅広い読者層を熱狂させた真のエンターテイナーであった事だけは間違いありません。
銃器やメカに精通し、ハードな男の世界を描く事に心血を注いだ作家のように思われがちですが、実は厚い義理人情や独自のユーモアが作品の隠し味となっており、男前のキャラクター達が多くの女性ファンをも魅了していたのです。
またアメリカンナイズドされた肉感的でセクシーな美女を描かせたら漫画界随一で、作品発表の場を青年誌に移してからはその本領を発揮し、艶やかな女性が主人公のコメディ作品で新境地を開拓されていました。
わずかな描線だけでここまで緻密に女性の身体の質感を描き出せる漫画家を、僕は他に知りません。
荘厳なまでの女体美に魅了された望月氏は絵に描くだけでは飽き足らず、女性をモチーフにした多くの3Dフィギュアも自作しています。 その腕前はプロの原型師を超えていると言っても過言ではないほど一体一体が精密に作りこまれ、ファン垂涎の素晴らし出来栄えとなっています。 こんなところにも望月氏の凝り性が表れていると思います。
©Mikiya Mochizuki
実は僕は多感な思春期の頃、望月氏の描くエロかっこいい女性達に心を奪われていました。
特にワイルド7の紅一点・本間ユキのS性は、僕のマゾヒズムをおおいに刺激してくれていたのです。
かつてゲリラ一味に家族を皆殺しにされた彼女は、復讐に燃える冷徹なゲリラハンターとして登場し、やがてその類稀なる戦闘能力と巨悪を許さぬ正義感を買われ、ワイルド7の追加メンバーとして迎えられます。
それまで少年誌では決してお目にかかる事がなかったグラマラスでエロティックな肢体。
銃器だけではなくその躍動感溢れるボディを武器に変えて、悪党どもを次々となぎ倒していく姿に僕は魅了されていました。
何しろ彼女の膝蹴りを顔面に食らった敵の戦闘員が、鼻の下を伸ばして「ウヒウヒもっと…」とおかわりを欲しがってしまうくらいS的魅力がある女性なのです。
©Mikiya Mochizuki
こうした描写を見ると、望月氏は男性に内在するマゾヒズムを充分理解した上で攻撃的な女性を描いていたように思えます。
彼女は作品中ではみそっかすのユキと呼ばれていましたが、中々どうしてリーダーの飛葉を支えて男性メンバーのお株を奪う素晴らしい活躍を見せていました。
作品の後半では警部補の地位を与えられた女性だけの別動隊“女ワイルド7”を結成し、そのリーダーとして圧倒的な存在感を示すまでに成長したのです。
©Mikiya Mochizuki
映画「ワイルド7」に関して言えば、ファンの間でも賛否両論のようですが、漫画原作の実写化は概ね世間的評価は低いものです。 特に“ワイルド7”のようにすでに不朽の名作としての評価が確立されている作品に手を出す事は、聖域を侵す行為に等しいと思います。
原作に思い入れが深いファンほど安易な設定の改変や蛇足的なエピソードの付け足しを嫌いますし、キャラクターのイメージを少しも損なう事なく誰もが納得いくキャスティングをするのは至難の技でしょう。
原作の雰囲気だけはそこはかとなく伝わってはくるものの、やはり別物。 僕にとって映画「ワイルド7」はそんな感想を持った作品でした。
しかしあくまで個人的見解ではありますが、僕は本間ユキのキャスティングに深田恭子を起用した事だけは評価しています。 原作とはキャラクター設定もかなり変更されていましたが、ベビーフェイスには不釣り合いな過激なエロスを発散する肢体、どこかもの悲しげで謎めいたユキのキャラクターに深キョンはピッタリとはまっていたと思います。
何と言っても彼女にならば、悪党になって退治されたいと思えますもん^o^
かつてお色気とアクションを融合させてテレビの前のM男性達を釘付けにしたテレビドラマ「プレイガール」や「フラワーアクション009ノ1」のお姉さま達を、さらに冷酷非情にしたS的キャラクター・ユキはハードマゾに憧れていた少年期の僕の心のドミナでした。
たくさんの夢や希望、M的妄想を与えてくれた望月三起也氏に感謝し、謹んでご冥福をお祈り致します。