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顔面騎乗主義者の死

 “メメント・モリ”と言う言葉があります。

 生きとし生けるものにはいつか必ず“死”の瞬間が訪れる。 自分自身もいつか死を迎える事を忘れるな…というような意味だったと思います。
 
 しかし、愛してやまなかったものの突然の死は、そうした死生観を理解していたとしても受け入れ難く、如何ともしがたい悲しみに襲われ失意のどん底に突き落とされます。

 僕には、親の死よりも衝撃的で悲しかった経験があります。
 
 漫画家、手塚治虫の死を知った時の事です。
 孤独な幼少年期を過ごした僕は、手塚漫画に支えられ、育てられたと言っても過言ではありません。

 だから氏の訃報を知った時、僕は一人、部屋に籠って泣き明かしました。

 
 4月25日付けの「マゾヒズムに花束を!」の記事で、世界的なfemdomアーティストである春川ナミオ画伯の訃報を知りました。

 手塚治虫の死を知った時と同様の衝撃が走りました。

 僕は春川画伯の描く作品の単なる一ファンに過ぎません。 氏とは一度もお目にかかった事はありませんし、ご本名もお顔も、どういう経歴の持ち主なのかも存じ上げません。

 しかし、氏が50年以上に渡って描き続けてきた独自の世界観は、マゾヒストである僕の心を捉え今も魅了して止みません。

 僕は、自分がハッキリと陽と陰を併せ持った人間であるという自覚があります。
 
 メジャーな物を好む裏で、同時にアンダーグラウンドなものにも強く心を惹かれます。
 漫画や映画や、絵画や音楽や、小説や写真など全ての芸術的分野の好みにおいて、そういう二面性の傾向があります。 それは我がマゾヒズムと密接な関係があるのかもしれません。
 
 春川画伯は、そんな僕のダークサイドを育て、支えて下さった恩人だと思っています。

 前回の自伝漫画にも描きましたが、自らのマゾヒズムを持て余していた学生時代、古書店に入り浸り大量のSM雑誌の山から数少ないM男情報を漁っていた日々の中で、春川画伯の描くfemdomアートは僕のマゾヒズムへの渇望を癒し、忘我の時を与えてくれました。

 溜まりに溜まったSM雑誌の隠し場所に頭を悩ませ、泣く泣く処分を考えた時も春川画伯のグラビアページだけは切り抜いて大切に保存しておきました。 ポージングだけの女王様の写真よりも妄想力を掻き立ててくれる春川アートの方がお気に入りだったのです。

 ネットにfemdom情報が溢れ、若干食傷気味になった現在でも春川画伯の作品だけは特別です。 僕のマゾヒズムの原点であり故郷のような存在なのです。

 絵を描くというのは孤独な作業です。
 特定のマニアにだけ向けた創作ならば、なおさらかもしれません。

 ただ春川画伯は、自らの女体崇拝や巨尻信仰に没頭し、あたかも円空が生涯をかけて彫り続けた12万体とも言われる木彫りの仏像の如く、彼もまた生涯をかけてあの膨大な作品群を紡ぎ上げていったのではないかと想像します。

 見る者をほとんど意識する事なく、自らの妄想を具現化する事だけに傾注されていたのではないかと窺えるのです。

 そして一度描き終えてしまった作品にはあまり執着はないようです。気前よく人にプレゼントしたり、展示会で販売したりして手元に置いておく事にこだわりはないように感じます。

 もしかしたら特殊な絵という事で、軽く見られているであろう怨念や諦めのようなものがあったのかもしれません。

 女性は圧倒的な存在であってほしい。女性のお尻はともかくもっと神秘的であってほしい。
 謎めいたパーツと化したお尻の奥には一体何があるのだろう…

 生前、巨匠はインタビューでそう答えていました。僕も同感です。

 それは、女体や、崇高な女性の秘部への信仰心とも言える強い思いです。

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 完全無欠な美を纏った女体群と醜く矮小な男達との対比は、絶対的主従の法則を明らかにしています。

 以前、homerさんが監督された北川ビデオ「顔面騎乗に花束を!」の中で、顔を半分隠してインタビューに答えておられる春川画伯のお姿を拝見した事があります。 その穏やかな物言いと優しそうな雰囲気の中にも繊細で神経質で几帳面そうな一面、強固な意思のようなものも窺え、それまで自分が思い描いていた画伯のイメージとあまりにもピッタリだったので妙な親近感を覚えたものでした。

 昨年上梓された、春川画伯の50年の画業を凝縮した「春川ナミオ画集」。
 当時ネットで買い求め、著者サイン入りを入手する事ができました。
 そして、とある方から贈って頂いた春川画伯の迫真の直筆原画。

 これらは春川画伯が亡くなった後も、常に彼の存在を身近に感じさせてくれる、僕の宝物になりました。

 我がマゾヒズム人生に大いなる夢と希望を与えて下さった春川ナミオ画伯に改めて感謝の気持ちを捧げ、偉大なる存在でありながらメディアにその死を取り上げられる事もなく静かに逝ってしまった孤高の画家の画業を讃え、故人のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

 春川ナミオ画伯、長い間、本当にありがとうございました。そしてこれからも永遠に…


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mugi

Author:mugi
踏みつけられて、より強く丈夫に
育つムギの様でありなさいと
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しかも音の響きも可愛らしい。
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とても気に入っています(*^o^*)
馬派(苦痛)・犬派(奉仕)・豚派
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せたオールラウンダーな変態を
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