平伏して待つ
前回のご調教での出来事です。
調教開始時間の3時間前にホテルに入った僕は、部屋でご主人様をお迎えする為の準備に余念がありませんでした。
テーブルには拷問用の道具類を整然と並べ、鞭打ちの為に広めのスペースを確保し、ルーム内の設備を利用して全身を拘束する為の簡易磔台を作ります。 通常はこれらの作業に3、40分程かかるのです。
その後、ご主人様に失礼の無いようにトイレや歯磨き等を済ませ、1時間かけてゆっくりと入浴し身体の隅々まで念入りに洗浄します。
冬の肌は乾燥して敏感になっているせいか、普段より鞭の痛みに耐えられない事があります。
すぐに音を上げてしまっては、ご主人様のサディズムを満たして差し上げる事ができません。
そんな時の為にサウナで、凍てついた身体を芯から温めておく事も重要です。
全ての準備が整ったら、ご主人様にメールでお部屋番号を伝え、玄関先に平伏してお出でになるまでの間お待ちします。
ホーマーさんが、責め待ち時と呼ぶ厳粛な時間が流れます。
厳しいご調教に向けた心の準備を整えながら、ご主人様をお待ちするのもまた、奴隷の僕にとってこの上無い至福の時間なのです。
ところが…
入浴しようとお湯を張って人心地ついていた時、ご主人様からメールが届いている事に気がつきました。
それは、ご体調が優れない為、"調教日を明日に変更できないか?”というご相談のメールでした。
ご主人様は、僕がギリギリ家を出たか、あるいはまだ家にいる頃かと思っていらっしゃったようです。
なんてお返事したらいいのだろう?…軽いパニック状態に陥る僕。
ご主人様のご体調を慮りながらも、気分は完全に調教モードに入っていた為、正直に現在の状況をお伝えしました。
すると、“多少遅れるかもしれないけれど頑張って行く”というお返事が返ってきたのです。
僕は少し安堵しましたが、浴槽に浸かって冷静さを取り戻すと徐々に後悔の念に駆られ始めました。
奴隷にとって最も大切な方が、お加減が悪いと仰ってわざわざメールを下さっているのに、自分はなぜすぐさま「今日はキャンセルして下さい」と伝えなかったのだろう…
慌てて「今日はキャンセルにして下さい」とメールをするも、時すでに遅く、ご主人様からは「今、地元の駅に着いたところ」との知らせが入りました。
しかも「テンションが下がるような事を言ってゴメンね」と僕の事を気遣って下さっています…
奴隷としての未熟さを露呈してしまった自分に自己嫌悪。
僕は申し訳ない気持ちで一杯になりながら、玄関先でご主人様のお出でになるのをお待ちしていました。
ご主人様は遅れる事なく予定時間ピッタリにお見えになりましたが、そのお顔色は予想以上に青白く、憔悴されているご様子がありありと見てとれました。
伺うと、昨夜はひどくご体調を崩し、嘔吐までされたのだとか。
ところが、夜中には回復の兆しが見えた為、ご調教をキャンセルしないまま朝を迎えられたのだそうです。
しかし、今朝から再びひどい腹痛にみまわれ、止むを得ず僕にメールを下さったという事でした。
自分の欲望を優先し、体調が悪いご主人様に大変なご無理をさせてしまった…
僕は一体なんて事をしてしまったのだろう!? 後悔の念は増すばかりです。
ご主人様の奴隷として決意を新たにしたばかりなのに、これではSMクラブのお客さんだった頃と全く変わっていないではないか!?
この上は、ご主人様のご気分が回復されるまでお休み頂くしかありません。
僕はご主人様に「よろしければマッサージをさせて下さい。 ご回復されるまでごゆっくりとお休みになって下さいませ」と申し出ました。
ご主人様からご快諾を頂き、僕はベッドの上に横たわったご主人様のご回復を祈念しながら丁寧にお身体を揉みほぐし始めました。
40分ほどマッサージをしていると会話が途絶え、スースーと微かな寝息が聴こえてきました。
僕はさらに20分位ソフトにお揉みして、ソッとお顔を覗き込むと天使のように安らかなお顔でお眠りになっています。
M客には絶対に見せた事がないであろう、その美しい寝顔に見惚れながら僕はホッと胸を撫で下ろしました。
これ以上、マッサージを続けていたらご主人様がお目を覚まされてしまうかも…
僕はご主人様を起こさないように、お足元の方から静かにベッドを降りると、形良く並んだご主人様の両のおみ足にそっと頬を寄せてみました。 するとどういうわけか、両目に涙が滲んできます。
いつも明るくてにこやかでご健康そうなイメージしかないご主人様が、辛いお顔をされ僕の前で弱みを見せて下さっている…
僕はご主人様のお身体に布団をお掛けして、お脱ぎになられた靴を揃えると、ベッドの傍らに正座しました。 すると、頭と掌が自然と床に着き、平伏す格好になったのです。
SMクラブの意図的な放置プレイは苦手な僕でしたが、女主人様の傍らで祈りながらご回復をお待ちするのは奴隷の務めのような気がしました。
“どうか、1秒でも早くお元気になって下さい!”
僕はご主人様がお目を覚まさないように気配を殺し、長い間その場に平伏していました。
どれくらい経ったのでしょうか…
徐々に襲いくる膝の痛みや足の痺れ、そして喉の渇き。
尿意も催し、それも限界が近づいてきました。
トイレ位は行っても構わないだろうか?…
いやいや、今、音を立てたりしたら、ご主人様の安眠が妨げられてしまう。
以前、ご主人様が他のM男と徹夜でお酒を飲まれ、二日酔いのような状態でご調教に来られた事がありました。 その時もご気分の優れないご主人様のお身体をマッサージさせて頂き、少しの間お休み頂きました。
SMクラブでは決してお見せにならないご主人様の自然体に触れて感激はしたものの、翌日にご調教を控えたご主人様を明け方まで連れ回したM男の身勝手さには憤慨したものでした。
あの時はどこかに、ご主人様に早くお目覚め頂きたいという思いがあったのでしょう。
音が立つのも憚らず、トイレに立ち、シャワーを使ったような記憶があります。
それを考えると、今の自分は奴隷として成長を遂げたような気がしなくもありません。
いや、しかし、ご気分の悪いご主人様に配慮ができなかった時点で“奴隷失格”です。
膝を折り曲げ、頭を床に着けて身動ぎもせずに同じ姿勢を保っているだけで、1時間も経過する頃には相当身体が辛くなってきました。 まるで修行か拷問のようです。
しかし、この日の僕はご主人様が自然とお目覚めになるまで、4時間でも5時間でも平伏してお待ちする覚悟でした。
布団の擦れる音が聞こえる度に「ご主人様、どうかまだお目覚めにならないで、ごゆっくりとお休みになっていて下さい」と念じていました。
“僕がこの苦痛に耐えきる事で、ご主人様の苦痛が少しでも和らぐのだ!”
“これはお加減の悪いご主人様にご無理をさせた奴隷への懲罰でもあるのだ‼︎”
ところが…
そんな思いが頭を巡り始めると、どういうわけか僕は次第に呼吸が荒くなり、下半身が反応してきてしまったのです。
ハアハアハァ…と、自分の耳にもはっきりと苦しそうな息遣いが聞こえます。
“マズイ!このままではご主人様が目を覚まされてしまう!!”
見ると、半勃起状態の先端からヌラヌラといやらしい液が滲み出て床を汚しているではありませんか!
“不敬者め! お前はご主人様が苦しんでおられるのに、何を悦んでいるんだ!?”
しかし正直に告白すると、この時、僕はこれまでに味わった事のない快感に包まれていたのです。
自らを犠牲にして主人に忠誠を示そうとする、自己の奴隷らしい姿に陶酔していたのかもしれません。
もちろんそれは自己満足にしか過ぎませんが、僕はご主人様のお手を煩わせる事なくマゾヒズムを刺激されていたのです。
かつては肉体的な責めにしか反応しなかった僕のマゾヒズムが、ご主人様の奴隷にして頂いてから大きく変貌を遂げ、精神的領域にまで拡がってきています。
単純だった構造が、どんどん複雑化しているのが自分自身でもわかるのです。
この時、目覚めた快感も新たな領域の一つなのでしょう。
僕は目を硬く閉じ歯を食いしばって、しばらくの間、苦痛や煩悩と戦っていました。
しかし、その気配を感じ取られたのか、間もなく頭上から布団を退かす音と共にご主人様のお声が聞こえてきました。
「ごめんねムギ!私、寝ちゃった…」
僕は恐る恐る頭を上げました。
半身を起こされて僕の顔を見つめているご主人様は、お休みになられている間、奴隷がずっと床で平伏していた事には気がつかれていないご様子でした。
この時、ご主人様がお部屋にいらしてから2時間半が経過していました。
僕の中で、ご主人様が少しお元気になられて良かったという思いと、もう少しこの快感を味わっていたかったという思いと、限界が近づいていたのでホッとした思いが綯い交ぜになっていました。
いつもと変わらぬ笑顔もこぼれ、僕は心の底から安堵しました。
そして…ご調教開始。
僕は、ご主人様が病魔を振り払うかのごとく激しく打ち付けられる一本鞭に必死に耐えながら「今、僕はご主人様にご無理をさせてしまった罰を受けているのだ!」 「2度と同じ過ちを繰り返さないためにも、もっともっと厳しいお仕置きをして下さい!」と心の中で叫んでいたのでした。
ご主人様は「今回寝てしまった分、次回は調教時間を延長するね!」と仰って下さいましたが、それはご辞退させて頂きました。
ご主人様がお休みになっていた間も、僕は奴隷としてのご調教をしっかりと受けていたのですから。
後日、その事をご主人様にお伝えすると「思いがけず新たな調教が出来てよかった!」とお喜び頂きました。
そして「私は誰かに甘えるのが苦手だから、ムギに甘えさせてもらって嬉しい!」と、もったいないお言葉まで下さったのです。
大好きなご主人様。
前回のご調教では奴隷としての配慮が欠けており、大変申し訳ございませんでした。
今後はお加減が悪い時は、どうかご遠慮なくご調教をキャンセルして下さいませ。
ご調教中にご気分が悪くなられた時も、奴隷の事はお気になさらず、ごゆっくりとお休みになって下さい。
ご主人様がお元気になられるまで、奴隷として傍らで平伏して何時間でもお持ちしております。
僕にとって、あなた様の存在だけが全てなのですから。
調教開始時間の3時間前にホテルに入った僕は、部屋でご主人様をお迎えする為の準備に余念がありませんでした。
テーブルには拷問用の道具類を整然と並べ、鞭打ちの為に広めのスペースを確保し、ルーム内の設備を利用して全身を拘束する為の簡易磔台を作ります。 通常はこれらの作業に3、40分程かかるのです。
その後、ご主人様に失礼の無いようにトイレや歯磨き等を済ませ、1時間かけてゆっくりと入浴し身体の隅々まで念入りに洗浄します。
冬の肌は乾燥して敏感になっているせいか、普段より鞭の痛みに耐えられない事があります。
すぐに音を上げてしまっては、ご主人様のサディズムを満たして差し上げる事ができません。
そんな時の為にサウナで、凍てついた身体を芯から温めておく事も重要です。
全ての準備が整ったら、ご主人様にメールでお部屋番号を伝え、玄関先に平伏してお出でになるまでの間お待ちします。
ホーマーさんが、責め待ち時と呼ぶ厳粛な時間が流れます。
厳しいご調教に向けた心の準備を整えながら、ご主人様をお待ちするのもまた、奴隷の僕にとってこの上無い至福の時間なのです。
ところが…
入浴しようとお湯を張って人心地ついていた時、ご主人様からメールが届いている事に気がつきました。
それは、ご体調が優れない為、"調教日を明日に変更できないか?”というご相談のメールでした。
ご主人様は、僕がギリギリ家を出たか、あるいはまだ家にいる頃かと思っていらっしゃったようです。
なんてお返事したらいいのだろう?…軽いパニック状態に陥る僕。
ご主人様のご体調を慮りながらも、気分は完全に調教モードに入っていた為、正直に現在の状況をお伝えしました。
すると、“多少遅れるかもしれないけれど頑張って行く”というお返事が返ってきたのです。
僕は少し安堵しましたが、浴槽に浸かって冷静さを取り戻すと徐々に後悔の念に駆られ始めました。
奴隷にとって最も大切な方が、お加減が悪いと仰ってわざわざメールを下さっているのに、自分はなぜすぐさま「今日はキャンセルして下さい」と伝えなかったのだろう…
慌てて「今日はキャンセルにして下さい」とメールをするも、時すでに遅く、ご主人様からは「今、地元の駅に着いたところ」との知らせが入りました。
しかも「テンションが下がるような事を言ってゴメンね」と僕の事を気遣って下さっています…
奴隷としての未熟さを露呈してしまった自分に自己嫌悪。
僕は申し訳ない気持ちで一杯になりながら、玄関先でご主人様のお出でになるのをお待ちしていました。
ご主人様は遅れる事なく予定時間ピッタリにお見えになりましたが、そのお顔色は予想以上に青白く、憔悴されているご様子がありありと見てとれました。
伺うと、昨夜はひどくご体調を崩し、嘔吐までされたのだとか。
ところが、夜中には回復の兆しが見えた為、ご調教をキャンセルしないまま朝を迎えられたのだそうです。
しかし、今朝から再びひどい腹痛にみまわれ、止むを得ず僕にメールを下さったという事でした。
自分の欲望を優先し、体調が悪いご主人様に大変なご無理をさせてしまった…
僕は一体なんて事をしてしまったのだろう!? 後悔の念は増すばかりです。
ご主人様の奴隷として決意を新たにしたばかりなのに、これではSMクラブのお客さんだった頃と全く変わっていないではないか!?
この上は、ご主人様のご気分が回復されるまでお休み頂くしかありません。
僕はご主人様に「よろしければマッサージをさせて下さい。 ご回復されるまでごゆっくりとお休みになって下さいませ」と申し出ました。
ご主人様からご快諾を頂き、僕はベッドの上に横たわったご主人様のご回復を祈念しながら丁寧にお身体を揉みほぐし始めました。
40分ほどマッサージをしていると会話が途絶え、スースーと微かな寝息が聴こえてきました。
僕はさらに20分位ソフトにお揉みして、ソッとお顔を覗き込むと天使のように安らかなお顔でお眠りになっています。
M客には絶対に見せた事がないであろう、その美しい寝顔に見惚れながら僕はホッと胸を撫で下ろしました。
これ以上、マッサージを続けていたらご主人様がお目を覚まされてしまうかも…
僕はご主人様を起こさないように、お足元の方から静かにベッドを降りると、形良く並んだご主人様の両のおみ足にそっと頬を寄せてみました。 するとどういうわけか、両目に涙が滲んできます。
いつも明るくてにこやかでご健康そうなイメージしかないご主人様が、辛いお顔をされ僕の前で弱みを見せて下さっている…
僕はご主人様のお身体に布団をお掛けして、お脱ぎになられた靴を揃えると、ベッドの傍らに正座しました。 すると、頭と掌が自然と床に着き、平伏す格好になったのです。
SMクラブの意図的な放置プレイは苦手な僕でしたが、女主人様の傍らで祈りながらご回復をお待ちするのは奴隷の務めのような気がしました。
“どうか、1秒でも早くお元気になって下さい!”
僕はご主人様がお目を覚まさないように気配を殺し、長い間その場に平伏していました。
どれくらい経ったのでしょうか…
徐々に襲いくる膝の痛みや足の痺れ、そして喉の渇き。
尿意も催し、それも限界が近づいてきました。
トイレ位は行っても構わないだろうか?…
いやいや、今、音を立てたりしたら、ご主人様の安眠が妨げられてしまう。
以前、ご主人様が他のM男と徹夜でお酒を飲まれ、二日酔いのような状態でご調教に来られた事がありました。 その時もご気分の優れないご主人様のお身体をマッサージさせて頂き、少しの間お休み頂きました。
SMクラブでは決してお見せにならないご主人様の自然体に触れて感激はしたものの、翌日にご調教を控えたご主人様を明け方まで連れ回したM男の身勝手さには憤慨したものでした。
あの時はどこかに、ご主人様に早くお目覚め頂きたいという思いがあったのでしょう。
音が立つのも憚らず、トイレに立ち、シャワーを使ったような記憶があります。
それを考えると、今の自分は奴隷として成長を遂げたような気がしなくもありません。
いや、しかし、ご気分の悪いご主人様に配慮ができなかった時点で“奴隷失格”です。
膝を折り曲げ、頭を床に着けて身動ぎもせずに同じ姿勢を保っているだけで、1時間も経過する頃には相当身体が辛くなってきました。 まるで修行か拷問のようです。
しかし、この日の僕はご主人様が自然とお目覚めになるまで、4時間でも5時間でも平伏してお待ちする覚悟でした。
布団の擦れる音が聞こえる度に「ご主人様、どうかまだお目覚めにならないで、ごゆっくりとお休みになっていて下さい」と念じていました。
“僕がこの苦痛に耐えきる事で、ご主人様の苦痛が少しでも和らぐのだ!”
“これはお加減の悪いご主人様にご無理をさせた奴隷への懲罰でもあるのだ‼︎”
ところが…
そんな思いが頭を巡り始めると、どういうわけか僕は次第に呼吸が荒くなり、下半身が反応してきてしまったのです。
ハアハアハァ…と、自分の耳にもはっきりと苦しそうな息遣いが聞こえます。
“マズイ!このままではご主人様が目を覚まされてしまう!!”
見ると、半勃起状態の先端からヌラヌラといやらしい液が滲み出て床を汚しているではありませんか!
“不敬者め! お前はご主人様が苦しんでおられるのに、何を悦んでいるんだ!?”
しかし正直に告白すると、この時、僕はこれまでに味わった事のない快感に包まれていたのです。
自らを犠牲にして主人に忠誠を示そうとする、自己の奴隷らしい姿に陶酔していたのかもしれません。
もちろんそれは自己満足にしか過ぎませんが、僕はご主人様のお手を煩わせる事なくマゾヒズムを刺激されていたのです。
かつては肉体的な責めにしか反応しなかった僕のマゾヒズムが、ご主人様の奴隷にして頂いてから大きく変貌を遂げ、精神的領域にまで拡がってきています。
単純だった構造が、どんどん複雑化しているのが自分自身でもわかるのです。
この時、目覚めた快感も新たな領域の一つなのでしょう。
僕は目を硬く閉じ歯を食いしばって、しばらくの間、苦痛や煩悩と戦っていました。
しかし、その気配を感じ取られたのか、間もなく頭上から布団を退かす音と共にご主人様のお声が聞こえてきました。
「ごめんねムギ!私、寝ちゃった…」
僕は恐る恐る頭を上げました。
半身を起こされて僕の顔を見つめているご主人様は、お休みになられている間、奴隷がずっと床で平伏していた事には気がつかれていないご様子でした。
この時、ご主人様がお部屋にいらしてから2時間半が経過していました。
僕の中で、ご主人様が少しお元気になられて良かったという思いと、もう少しこの快感を味わっていたかったという思いと、限界が近づいていたのでホッとした思いが綯い交ぜになっていました。
いつもと変わらぬ笑顔もこぼれ、僕は心の底から安堵しました。
そして…ご調教開始。
僕は、ご主人様が病魔を振り払うかのごとく激しく打ち付けられる一本鞭に必死に耐えながら「今、僕はご主人様にご無理をさせてしまった罰を受けているのだ!」 「2度と同じ過ちを繰り返さないためにも、もっともっと厳しいお仕置きをして下さい!」と心の中で叫んでいたのでした。
ご主人様は「今回寝てしまった分、次回は調教時間を延長するね!」と仰って下さいましたが、それはご辞退させて頂きました。
ご主人様がお休みになっていた間も、僕は奴隷としてのご調教をしっかりと受けていたのですから。
後日、その事をご主人様にお伝えすると「思いがけず新たな調教が出来てよかった!」とお喜び頂きました。
そして「私は誰かに甘えるのが苦手だから、ムギに甘えさせてもらって嬉しい!」と、もったいないお言葉まで下さったのです。
大好きなご主人様。
前回のご調教では奴隷としての配慮が欠けており、大変申し訳ございませんでした。
今後はお加減が悪い時は、どうかご遠慮なくご調教をキャンセルして下さいませ。
ご調教中にご気分が悪くなられた時も、奴隷の事はお気になさらず、ごゆっくりとお休みになって下さい。
ご主人様がお元気になられるまで、奴隷として傍らで平伏して何時間でもお持ちしております。
僕にとって、あなた様の存在だけが全てなのですから。